季節を間違えたらしい惚けた太陽が爛々と大地を照りつけ、日に焼けた男の首筋を汗が伝う。
―――俺、ごぼう嫌い、つか野菜嫌い、肉くれ肉
―――うるせぇ、黙って喰え!!
立ち上る陽炎に目を細めて鍬に寄り掛かり、一息吐いた男は湿った手拭いで額を拭った。
―――喰えるじゃねぇか
―――うー…、でも、
―――あ?不味いとか抜かしやがったら……
―――違う違う、美味いよ…………って言うか…多分…、
散々記憶に蔓延り、そのくせ年々腐蝕する腑抜けた笑顔。
視界を覆う緑と、噎せ返るような土の匂いに、くらりとした。
―――テメェのために残してやってんだろうが、
―――余るんだよ、
―――さっさと喰いに来い、
「………馬鹿野郎、」
過ぎ去りし夏に逝きそびれた蝉の、悲哀に満ちた断末魔が、赤く色付き始めた木々の間をすり抜けていった。
(お前の作った野菜だから喰えてる……………のかな?)
(…………俺に聞くな)