僕は、戦いの真っ只中という戦場で戦いもせず立ち尽くしていた。
戦いに怖気付いた訳じゃない、ただ惚けてる訳じゃない。
じゃあ何かって?
理由は簡単さ
動けなるほど、目が離せなくなるほど
それほどまでの美しい者を見てしまったからさ
少し淡く赤い華奢なボディ、その体とは正反対に鋭い刃を光らせる得物。
噂には聞いた事はあった。
まだ若いと言うのに数々の功績を出している女性型トランスフォーマーがいるということは。
実際のところ、話を聞いたことがあるだけで興味なんて無かった。
だけど、実際に本人をこの目で見てみたら凄まじかった。
心に衝撃が走った。
その子は思っていた以上に華奢で可憐で、何よりも可愛らしい。
この様な少女が本当にあの噂が出てるほどの功績を出しているのか?と思うほどには。
それがどうしたことか
戦いになるとその子は凛々しく、なのに猛々しく。
次々と敵を薙ぎ倒して行った。
人によっては、彼女を見たものは恐ろしい物に見えるだろう。
しかし、僕は違う。
彼女に心を奪われてしまったんだ。
ふと、誰かが彼女の事をこう呼んでいた事を思い出した。
「戦乙女のようだ」
と。
正しくそうだと思った。
だけど、彼女を表す名はもっとあるはずだ…。
「おい!何ボーッとしてんだ!!」
『おぉ、我が同胞じゃないか』
「同期な!って、んな事言ってる場合じゃねぇだろ!」
『見たまえ、あれを』
「あ?あー…あの性悪女の事かよ。んなのどうでも
『実に美しい』
「…は?」
『華憐でありながら力強く…あぁ、我らの敵を倒す際に出る血を浴びて一層その美しさが増していくじゃないか…!』
「お、お前、正気か?」
『正気?ハハハ、どうだろう!彼女に心奪われてしまった僕は果たして正気と言えるのか?彼女に目が釘付けになってしまっていて目を離せない僕が!』
「うわ…めんどくせぇ事になってやがる…」
『彼女を戦乙女と呼ぶのはまさしくその通りだ。しかし…きっとまだ良い名があるはずだ…何か…赤…赤き…』
「(今のうちどっか行こ…)」
『我が同胞よ!何か良い案はないかね!?』
「知るかよ!こっちに振るな!!」
『ふむ、なかなか寂しい事を言うじゃないか…。………あぁ、そうだ、こんなのはどうだろうか!』
「なんでもいいから、とっとと動けよ…」
ーーー………
数年後…
ーとある場所にて…
『ふふ…ハハ、ハーッハッハッハ!!』
とあるトランスフォーマーが暗い部屋の中で映し出されているモニターの映像を見て笑っていた。
『あぁ…なんて事だ。こんな事があっていいのだろうか!』
実に嬉しそうに語り、愉悦に浸っていた。
『もう何年も前の話だったからもう出会えないだろうと思っていたけど…あぁ、僕はなんて運が良いのだろうか!』
自分以外誰もいないという大げさな動きをし、誰かに語るように言葉を発する。
『これもきっと何かの縁…これぞ運命!君と再び出会う事になるという事が確定した今!僕は君にすべきことがわかったよ!』
再びモニターを見つめ、笑う。
『待っていておくれ、きっとお迎えに上がるからね…
マイプリンセス、ジュリーアンガー』
そのトランスフォーマーは、モニターに映し出されるジュリーアンガーをじっと見つめていた。