話題:今日見た夢
都市開発で大分前に潰されてしまった、今はもう存在していない家に居た。
三畳ほどの小さな自室にあるデスクにブラウン管テレビを置き、見た事のない据え置きゲーム機でRPG系のゲームをして遊んでいた。
デスクが置かれている場所には大きな窓があり、カーテンが全開になっているが窓に嵌め込まれているのが磨り硝子なので外の様子は見えない、
ただ、硝子の向こう側が黒く塗り潰したようになっているので恐らく今は夜なのだろう。
暫くゲームで遊んだが、急に飽きてしまいゲーム機の電源を切った。
ゲームのBGMやキャラクターの音声が流れ、そこそこ賑やかだった室内が途端に静まり返る。
すると、何処からか聞こえてくる小さな声に気付いた。
耳を澄ましてみると、まるで小さな子供が啜り泣いているようなその声は、部屋の押し入れの中から聞こえてきている。
中に何が居るのだろう。
気味が悪かったが、どうにも気になってしまい襖に手を掛けるとゆっくりと開ける。
だが、それと同時に泣き声は止み、中を覗いてみたが押し入れの中にはタオルケットが一枚敷かれているだけで他には何も見当たらなかった。
気の所為だろうか。
押し入れの襖を閉める。
すると再び啜り泣く声がする。
襖を開ける。
やはり中には誰も居ない。
泣き声も止まる。
襖を閉める。
また泣き声が聞こえる。
それを二、三度繰り返し泣き声が聞こえる以外は特に何も無さそうなので、気味が悪かったが我慢して寝る事にした。
電気を消し、ベッドに横になる。
するとその泣き声が少し大きくなった。
いや、大きくなったというよりも近付いてきている…?
不意に、押し入れから這い出してくる子供の姿が脳裏に浮かぶ。
白い女の子…それは啜り泣きながら、ゆっくりと私の足元へ近付いてきて…
思わず隣の母の部屋に飛び込んだ。
電話をしていたらしい母は、突然私が部屋に飛び込んだからか驚いた顔をした。
どうしたの?と問う母に部屋の押し入れの中から泣き声がすると伝えると、耳を澄ませる。
相変わらず、私の部屋からは子供の啜り泣く声がしている。
聞こえるね。
それが母の第一声だった。
取り敢えず、居間に行こうと二人で母の部屋を出ようとすると、啜り泣く声がまた大きくなった。
ああ…今、私の部屋と母の部屋を繋ぐ襖の前に立っているんだ。
ふと、そんな事を思った瞬間。
掠れるような音を立て、ゆっくりと襖が開いた。
遮るものがないからか、その声は鮮明になると、より大きくはっきりと耳に届く。
完全に開ききった襖の向こうを母の部屋の常夜灯の橙色の明かりが、薄ぼんやりと照らしている。
狭い部屋に整然と並べられた机とベッドの輪郭が微かに浮かんで見えたが、それ以外に何もない。
部屋の前に立っているであろう子供の姿も見当たらない。
けれども、泣き声だけは大きさを増して聞こえている。
みしりと床が鳴る。
何かが此方へ来ている、子供が此方へ近付いている。
そう思った瞬間、泣き声が一際大きくなり、気付けば叫び声を上げていた。