君の言葉には不思議な力があるに違いない。
僕は本気でそう思っている。
だって、君の言葉はいつだって臆病な僕の背中を押してくれるから。
僕はお喋りが上手な方じゃなかった。
だけどホントは喋るのが嫌いな訳じゃない。
寧ホントは好きな方で…
こんな僕だけど、心を開いてる大切な大切な友達がたった一人だけいるのだ。
その子も僕と同じタイプで、
心を開いてる人にしか決してホントの自分を見せないタイプで、言ってしまえばコミュ障持ちで、おとなしい子だった。
だけど、ホントの君を僕だけはよく知っていた。
僕の隣にいるときの君は、面白いことが大好きで、優しくて、自分をしっかりと持っていて、良く笑う…そんな君の笑った顔が僕は大好きで…大好きで…。君は僕の憧れだった。
君が心にいてくれるから、僕は頑張れる。
君が背中を押してくれるなら、僕は勇気を出せる。
本気でそう思う。
ある日学校でいつものように、僕以外のクラスメイト達が楽しく談笑していた。
僕は『いいなぁ…僕もあんな風に楽しくみんなと話せたら…』
と、心で思っていた。
いつも僕は窓際の一番後ろの席で、一人空気のように大人しく座っていた。
でも、ふと君の言葉を思い出す。
『君ならきっと大丈夫!私がいつも応援してるから、だから…』
次の瞬間、自分でも無意識に口を開いていた。
「あのさ、」
『頑張れ!!!』
「僕もその番組、好きなんだ。あのお笑いの人、ホント面白いよね!」
みんなが驚いた顔して僕を見てる。
それもその筈だ、発言した僕自信だって驚いてる。いつもあと一歩が踏み出せない臆病で引っ込み思案な僕が、言いたいことを言えたのだ。
心臓が今にも破裂しそうな程、加速して止まらない。呼吸が苦しい…
少しの間、時が止まったかのように空気が凍り付いたけど、みんなが笑顔を向け、僕に手を差しのべてくれた。
「なんだぁ!○○も見てたの!?ってか、ビックリした!全然喋らないから、こういう輪に入るのが嫌いなんかと思ってたよ!一緒にもっと話そうよ!」
ありがとう、君の言葉があったから、
僕は踏み出すことができたよ。
ねぇ、これで僕の世界は少しは楽しい方へ変わるよね?
明日からもう、一人で隅っこに居なくてもいいんだ。
ありがとう、ありがとう…
僕の背中を押してくれて。
僕は放課後興奮が冷めないまま、君の元へと駆け出した。
「今度は僕が君の背中を押してあげる。君ならきっとできるよ。だからさ、もう一度笑ってよ。あの頃みたいに…」
そう、僕は君が永遠に眠る、君の墓へとやってきた。
墓というほどのものはなく、只低木が埋まってるだけだけど、僕は毎日今日の出来事を君に話しにここへ来ている。
君は両親から酷い扱いを受けていて、学校でも酷い虐めを受けていた。それでも君は、僕に優しく笑ってくれたのに、どうして僕は何も出来なかったのだろう?
僕は毎日悔やんだ。
君が自殺をするほど苦しんでいたのに、無理していつも僕に明るく接してくれていたのに、
どうして…どうして…
悔やんでも君は、もう還ってこないけど…
だから僕は変わることを決意したのだ。
せめて生前の君が応援してくれたその言葉に応えたかった。
君の言葉で僕は変われたよ。
だから今度は、君に僕の声が届けばいいな。
僕はずっと、
君のことが…
「大好きでした。」
これは勇気がない僕が、君に言えなかった
僕の【ことのは】。
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