…………



ここは マーロ共和国…
“ベルグとさなのへや”がこの地にあり…屋敷付きのメイド “スノゥ”によって よく手入れされていました…



今日(きょう)は ベルグと さな ここで過ごすようです…


台所(キッチン)の屋上の草地に座り なにやら話し込んでいる様子…


共和国服(青)の上下を着た白い肌に白灰色の髪…
ツーサイドの左側に金魚のかんざしをさした幼女が
話しかけます……

「ねぇ…ベルグ……
わたし“ネコ”といっしょに暮らしてみたい……」



「……“ネコ”?…
あの 3国で 釣った魚とコインやアイテムとを交換している?……」


共和国服(赤)の上下を褐色の肌に着た濃緑色の髪の
少女が聞き返します……

レッドアンダーリムメガネの下 暗緑色の瞳が何か考えているようです……

彼女の言う3国とは シュリンガー公国 アブル連邦 マーロ共和国 を指します……



「…いくたびに そこのネコと遊ぶだけでは 駄目なのか?……」


時おり吹く風がベルグの
後ろで縛った肩まである 濃緑色の髪を揺らします……



「ん〜…
そうなんだけど…

わたし達の家にも居ると
…うれしいかなって…」


少しおねだりをするように上目遣(づか)いに さな はベルグを見上げます…



「……ネコ…か……

3国交換所 以外では 見ないな……」


ベルグは考え込みます……


「ベルグぅ…
魔王ちゃんに聞いてみてよ……」


さな はその深い蒼色の瞳でベルグの暗緑色の瞳を覗き込みます……


「……わかった
魔王ちゃん(マイカ)と代わる……」


ベルグは先の一件で 魔王ちゃんと魂を融合しているのですが…
彼女は普段 ベルグに優先権を渡し魂の奥底で眠っているのです……



「はい は〜い

さな おひさしぶり…

わたしに 何か用かしら?」

普段は半眼のベルグの瞳が大きく広がり色も
暗緑色から薄い赤紫に変化…
口調もガラリと変わりました……



「え…えぇ……(^-^;

おひさしぶり……

やっぱり コレは なれないなぁ〜……」


ベルグの姿と声で 魔王ちゃんが喋(しゃべ)る のは
少し異様です……


毎度の事ながら
さな は引きぎみです……


「ちょっと……
…そんなに ひかないで…


ええっと“ネコ”だったわね……


あれは 魔物の一種よ…

魔法により生み出された…
アイテム交換所の為に存在するの…

町から連れ出すことはできないわ…

残念だけど……」


「そっか〜

いっしょに 過ごせないのか〜………」


さな は心底 残念そうに
その あどけない顔を曇らせます……



(……なぁ 魔王ちゃん[マイカ]……なんとか ならないのか?……)


ベルグが 心のなかで問いかけます…

(…ほんと あなたは パートナーに 甘いのね……)

心のなかのベルグに 魔王ちゃんは答えます…

2人のやり取りは さな には聞こえてません……



「……でも

新たに 生み出すことは
できるわ

魔王は 魔物を作りだせる
……知ってることよね?」


「まさか?

…………

ネコ を?」



驚きと期待の混じった顔で さな は ベルグ(魔王ちゃん)を見上げます……


立ち上がり 魔王ちゃんの仕草で ベルグは 説明を始めます……



「そう……
魔物を作り出すの…


これには……


作り出す魔物の 依り代(よりしろ)となるもの……

魔王の魂……

そして 強いおもい……


が必要なの……」



「……よりしろ?」


「……今回の場合は
ネコ の姿をしたものや
それをイメージするものね
…」



「えっと…家具のクロネコとか ネコミミカチューシャ…ネコハナマスク…ネコメ石…かな?」


ネコ を連想(イメージ)するものを
さな は次々とあげていきます……



「そんな感じ……


次の魔王の魂……
は わかるわよね?」


……………


「……ベルグの魂……」



「…そう 彼女の魂を分け与えるの……

……」


「……そのことで ベルグは死んだりしない?」


心底 心配そうな顔で さな はベルグ(魔王ちゃん)を 見上げます…



「ワタシは……大丈夫だ
以前にも こういう事
あっただろ?……」



瞳が半眼に戻り いつもの口調で ベルグは語りかけます……



「ベルグぅ〜……」


さな は立ち上がり 泣き出さんばかりにベルグに しがみつきます……


「……大丈夫だ
決して さな を1人にはしない……」


ベルグも さな を抱きしめます……



「うん…うん……

ぜったいだよ?」



「あぁ……

絶対だ……」


…………………


(……ほんと あなた達は
………)

心のなかで 魔王ちゃんは 呆(あき)れています……


…………………



「……続き いいかしら?」

瞳と口調が魔王ちゃんに
戻りました……


「……あっ うん…

おねがい……」



あわてて ベルグ(魔王ちゃん)から さな は離れます…



「………

最後は 強いおもい……

この ネコ は 存在すると 強く思うの……

依り代(よりしろ)をベルグだと 強く信じなさい…

さな なら うまくやれるわ…」



「うん!!」


涙を拭(ぬぐ)って
さな は強く答えます…



「……あとは 成功しそうな場所……


…ん〜………


そうだわ……!

墓所に しましょう!…」



“パンッ!!”
とベルグ(魔王ちゃん)は
手を叩(たた)きます…



「えっ!?

あそこ……?」



「フフッ………

あそこなら……

なんだか 成功しそうな気がしてくるでしょ?」


ベルグ(魔王ちゃん)は
悪戯(いたずら)っぽく笑います……



魔王ちゃんが言う“墓所”とは
“悔いと祈りと許しを”と名付けられた場所です……

ここは 入って正面右側奥に魔物をイメージしたカラーブロックのオブジェが置かれ ベルグが魔物への祈りの場として造られた空間でした……



そして 左側奥に ベルグと魔王ちゃんの墓もあります……



………………



準備の整った2人いえ3人?は この地を訪れました……

空は いつもと変わらない黄燈(オレンジ)色の夕方のまま……
…寂寥感(ものさびしさ)がこの場所を漂(ただよ)います……


……………



「こうして……

自分の お墓を 見るのは なんだか………

不思議な気分ね……

でも ここに お墓があることで あなた達が わたしの事を忘れないでいてくれる……

……………

わるくないわ……」



ベルグ(魔王ちゃん)は
少し寂(さび)しげに笑います……

顔 身体はベルグなのに
なんだか 妖艶なフインキが漂います……



「そんな 忘れることなんて
できないよ!」


さな は つい泣き出して
ベルグ(魔王ちゃん)に抱きついてしまいます……



「…………………

わたしの事を 思ってくれて
ありがとう……


……………


この儀式
成功させるわよ」



「うん!!」



2人の絆(きずな)は
より 深まったようです……




……………



2人は儀式の準備に入りました……



緑と赤のブロックを並べ
ベルグをイメージしたオブジェの上…
ネコ をイメージさせる素材が並べられ………


そして…

さな は膝をつき 祈ります……

「……ネコ になったベルグ……
ネコ になったベルグ……
…ベルグ……ベルグ……


…………

…………………」



必死にイメージします……

ベルグ(魔王ちゃん)は
分け御霊(わけみたま)の
儀式に入りました……

魂の一部を切り離し
そこにベルグの記憶を転写(うつ)していきます……


魂の奥底…ベルグは魂が引き裂かれる様な
痛みに必死に耐えています(………さな………さな………さなァ〜〜……!!)



……………


どれほど時が過ぎたでしょう……
2人の額に汗が浮かんでいきます…


………………


(……そろそろ 頃合いね)


ベルグを模したオブジェ…
その上の素材が 中心に集まり 何かをカタチ作ろうとしています……



ベルグ(魔王ちゃん)は胸の前で組んでいた両手を天に広げ
声高に宣言します…



「“い”“の”“ち”…


……………


さずけよォ〜〜〜〜………」



ベルグの下腹部に出現(あらわ)れた黒い霧が収束し
やがて点となり

オブジェ上(じょう)の
白く輝く素材の塊(かたまり)に

吸い込まれていきます……………



…………



「成功…

………したの?」


眩(まぶ)しさに思わず目を細める さな ……………


やがて
白い輝きが 収まり

小さなモノが

ちょこんと…

そこに……

居(い)ました………



…………………………



「はじめましてにゃ?

ベルグですにゃ……

こんごともヨロシク……
にゃ…………」



茶色と緑の体毛をした
ネコ? が そこに居ました……




…………ー ベルにゃのおはなし 誕生編 ー ……おわり……