ある冒険者のひとりごと……2 騎士として 其の5

前回のひとりごとから…

頂上で食べる クロッケは いつもよりも おいしい…

「だから ソレは クロケット!!」

…パートナーは
くちうるさい……




いつものように
神へ至る道へ
雪山と草原の東にある
小さなつり橋を渡り
小道を進むと…

掲示板の裏
草茂る丘のうえで
戦闘しているのが見えた…
戦闘中は中の様子は見えない……

平行世界へ移動しているからだ……

だが戦っている相手の魔物は見える…

代表の1体だけだが…

コレも冒険者の特技なのだろう……

なぜ そうなのかは解らない…
神の加護のひとつ
かもしれない……


いつもなら そのまま
通りすぎ去るのだが…

……?

おかしい?

戦闘が長すぎる……

すぐ終わるはずの戦闘が
なかなか終わらない…



嫌な予感がした……


他人(ヒト)の戦闘中に
割り込むのは
失礼な行為
ソレは解っている…
得られる報酬が分配され
自分の取り分が減るからだ…

知り合いなら ともかく
見ず知らずの者に
報酬を取られるは
…嫌なことだろう……


しかし ワタシは
飛び込んだ…
その戦闘のなかに………

ある冒険者のひとりごと……2 騎士として 其の4

前回のひとりごとから…

ワタシは騎士見習いとして旅を続ける…

…答えは見つかるのか?…



雪山と草原 その東に
神へ至る道 と呼ばれる地域がある…

その道を登って行くと

高い山に高い塔が建ち さらにその上に 願い事を叶える神と話せる巫女が住むという…


その神の加護の おかげか……

ここに出没する魔物は
他の地域に生息する
同じ名の魔物と比べて
強い…


この地には何度か来た…
川あり 海あり 山あり と 地形が複雑な為 道に迷いやすい…

しかし景色は素晴らしい…
高台から見る海は よい気晴らしになる…

こちら側の海は 遠浅になっており 沖の方まで歩いて行ける…
穏やかな海だ…

雪山と草原の西側は
切り立った断崖に なっており 波は荒い…


ワタシは 高台から穏やかな海を見るのが好きだ…

ここに座って海を眺め
パートナーが じゃがいもから合成したクロッケを
頬張(ほうば)り 魔物退治をする……
こんな事を しばらく日課にしていた…


そんな ある日……


ある冒険者のひとりごと……2 騎士として 其の3

前回のひとりごとから…


…気がつくと 頭上に
アブル連邦 教会 女司祭の顔があった……



「神の奇跡は使わなかったのですね…」

神の奇跡…
ソレは魔物に倒されても
その戦闘中に復活できる
冒険者にとって有難い“キセキ”だ…

しかし回数が決められている……

1日三回まで!!




……

………


“神の奇跡”も三度まで…
というわけだ……



この奇跡はパートナーは使えない

冒険者が自分で決めるのだ
心で強く念じて
初めて奇跡は起こるモノ

らしい……


あと パートナーも一緒に復活する

らしい……


連邦 教会司祭の お説教を聞きながら

ぼんやり 思考を巡らせていた……

この世界の神とは……
錬金術とは…
魔法とは…
魔物とは……

…………


お説教は終わったらしい…
最後に彼女は こう聞いた


「……修道士に戻る気は
ない?」



ワタシは


「……もう少し 考えさせてくれないか……」



いつものように

目をふせながら…

こたえた…


ワタシは人と目を合わせるのが苦手だ…



「ふぅ〜………
君は相変わらずなのですね……」



連邦女司祭は ため息をついた……



「いいわ……行ってきなさい……

あなたに 神の奇跡と祝福を……」



ワタシは騎士見習いとしての修行のため
あてもなく歩きはじめた


次こそ 答えは 見つかるだろうか?……


ある冒険者のひとりごと……2 騎士として 其の2

前回のひとりごとから…

ワタシは騎士として旅立った…

…胸に疑問を抱きつつ
答えは 見つかるだろうか?……




3国国境を 知ってるだろうか?
魔王城へ抜ける途中にある国境地帯だ…
この先には 南にマーロ共和国 東にクリシュナ魔王国が 存在(あ)るらしい……



ここの魔物は 広がる平原に比べると かなり強く
修行には 丁度よい場所だ…



しかし 魔物を狩りすぎると ここのヌシが 現れ
逆に冒険者を狩るとゆう
噂だ……



ワタシは偶然にも遭遇してしまったのだ……


孤立無縁の時に………


…どうして こんなことに……


……………


…いきなりで悪いが
平行世界を知ってるいるだろうか?

我々がいる世界とよく似た世界…
……しかし 微妙に違う世界…

魔物との戦闘中に感じる
違和感……

そう ワタシは魔物と戦っているのに ワタシ以外が居ない世界…
もちろん パートナーは 一緒にいるが……

戦闘に入る前まで 近くに居た冒険者が見えなくなる現象……

あれの世界規模だと思って欲しい……

とにかく ワタシとパートナー以外が存在しない世界……

狩りに夢中に なっていたワタシは 気付いていなかったのだ…

そんな世界に迷い込んだコトに……




“カラアゲ”と呼ばれる空飛ぶ魔物と遭遇 した時だ…

一緒にいた
ムラサキ色の大きな影が
咆哮(ほうこう)をあげた


「あれは…ベルナルド!」


パートナーが悲鳴をあげる……

この世界の魔物に個体名は無い…

種族ベルナルド……

めったに お目にかかれない珍しい魔物……


それだけに 桁外れに強い……




…ここは 戦うべきか?

…それとも 逃げる?

パートナーは ワタシに
判断を求めている


そう ワタシが 決めるのだ

この異世界に迷い込んだのは 戦闘後だ…

…ならば もう一度戦えば 元の世界に戻れるかも!

ここで逃げても 元の世界に戻れるか わからない…

ワタシは 選択した……






……

………





!?



「……ここは?」



…見覚えがある
アブル連邦 城門前


修道士 女試験官が
ワタシを見下ろしている…



…そして
周囲の喧騒が聞こえてきた………

ある冒険者のひとりごと……2 騎士として 其の1

前回のひとりごとから

ワタシは修道士としての
自信をなくし
違う職業に就くことにした……


……ソレは逃げなのかも
しれない





連邦酒場にある職業斡旋所(ハロージョブ)……

…ここで冒険者という名の無職者から
……修道士の道を選んだのだが……




……

………


「アナタに合うお仕事を ご紹介しますよ!」

いつもの明るい声がする

カウンターの方からだ…


せっかく就いた修道士だが…
気が重い……

いつも口数の少ないワタシだが…

職業を変えたいと
…なかなか
切り出せない……

どうしたモノかと
カウンター前で ひとり うつむき 黙っていると……



パートナーが ズバリと
切り込んできた…



「このヒト 転職したいんで!!
手続き お願いします!!」



ワタシは 恥ずかしさで 顔が真っ赤になっていた……

と思う…


肌が褐色なのと無愛想な顔をしているので
他人には 不機嫌な顔した チビっ娘が 何かブツブツ言っている様に見えた……
…だけだろう……




様々な職業の中から

ワタシは…


……騎士(ナイト)を選んだ


心の何処かで

まだワタシには
……他人を救いたい

という気持ちがあったから…………


しかしソレは傲慢(ごうまん)かもしれない…


…………


騎士とは華やかな職業だ
身分の高い者に仕え
その者の富と名声を高める為に剣を振るう
…だから装備品もきらびやかになる
主人の名を汚してはならないから…


騎士の試験官は王に仕えなくても いい…
“己の仕える者の為に剣を振るえ…”と言った


…しかし ワタシは 仕える者を見付けられるだろうか?


ありあわせの装備品
騎士とは名ばかりの
冒険者だ…


騎士の武器とは両手槍らしい…


……エアリースチールブレード……

手元にあるのは この両手剣のみ……


コレを振るって
騎士見習いとして旅立つ…
としよう…




……ワタシは騎士(ナイト)にふさわしいのか?


仕えるべき主人は見つかるだろうか?


この疑問と共に………