シュリンガー公国 酒場前
大通り……
そこは新人からベテランまで様々なひとでごった返しています……

いつの頃からか 頭装備や アクセサリーを使って
様々な仮装をする人々が現(あらわ)れはじめました……

…やがて…それが定着し……

毎日が 仮装パーティー
ハロウィン 百鬼夜行 です……



そんな ある日……

新人冒険者になった少年はパートナーのお姉さんと
日替わりの依頼を酒場の主人から受けて公国の宿を出ます……

すると……


「なっ なんや アレ!……」

少年の目に飛び込んで来たのは 仮装した集団……
そのなかでも 異彩を放つ 人?が いました……


雷(ライトニング)を受けた様な衝撃です

そのインパクトは後の少年のいきかたを大きく変えてしまいます………



「……きみ ………きみ!…」



どれくらいたったのでしょうか?
少年はパートナーのお姉さんの声で我にかえります…


「…い 今のは………?」



「…良かった…気がついたのね……」



立ったまま気絶していた少年…緑色の髪のお姉さんが膝をつきその肩を抱き優しく揺らしています

少年のポニーテールにした柔(やわ)らかそうな髪が
ゆらゆらと揺れて……

お姉さんは飽きる事なく
見つめています……



「あっ……居(お)らん……」


「その 人? なら去っていったわよ…」



少年は呆(ほう)けた顔をしています……



「なんや ごっつう凄いもんを見たような……」



「そんな事より“日替わり”に行きましょうよ…」


少年の顔に自(みずか)らの胸を押し付け その感触と少年の反応を楽しんでいます…

少年はビックリするやら 恥ずかしいやら

目を白黒させています……


「ちょ お姉さん! わかったから離れて……」



「ふふっ 元気になった?

じゃあ行きましょうか♪」


少年は お姉さんに遊ばれています……
胸のドキドキがおさまりません……

(…えぇ 匂いやったなぁ…おっぱいも大きくて……
こう 柔(やわ)らこうて……


………………


悪い人や ないんやけど…
こう しょっちゅう 抱きつかれると ワイの身体(み)がもたん……
どうにか ならんもんやろか……)



少年は考えますが
いいアイデアが出ません…
公国の門をくぐり雪の積もる長い階段を 降りよう…と……



「…へっ?

…………」



「あっ! きみっ!!
…………」



階段に積もった雪が昼間溶け夜には凍り……
滑りやすくなっていたのです
考え事をしていた少年は
足を滑らせ
スッてんコロリン!


長い階段を転がり落ちて行きます……



「わぁー!!……

…またかいな

………お助け〜〜!!」



「ちょっと 待ちなさい!!
きみッ!!……」



あわてて お姉さんは追いかけます…



“雪山と草原” そこは魔物が徘徊する危険地帯…
“ゲルミ”や“コノミ”奥の方には“オーク”が見えています……




……ブヨン………

転がる少年は何かブヨブヨしたモノにぶつかって
止まることができました



「……あいたたたっ
(^_^;)えろ すんません……」



謝りながら顔をあげると……



「…でっかい背中やなぁ…
って!ゲルミやないかい!!」



そうです 魔物の群れにぶつかって少年は助かったのです……


「あわわ どないしょ……

ワイひとりじゃ……
誰か 助けてぇな………

(/≧◇≦\)お姉さ〜ん!!」



「……もぅ しょうがないわねぇ……」


肩で 息つぎをしながら
やっと お姉さんが追いつきました…


「ちょっとマズイわね……
ゲルミ2体にゲルミパパ……

教会行きになりそうね……」


お姉さんは美しい眉間にシワを寄せ考えます……

黒縁メガネの奥で瞳が静かに燃えています……
言葉とウラハラに魔物に勝つ算段をしているようです


「きみッ!まずは お供から倒すわよ!
私たちから向かって左!倒したらすぐに右!
……パパは最後よ!
お供を倒すまで手を出さないで!!」


少年に指示を出しながら
お姉さんは片手剣“青銅の剣”を振(ふ)るいゲルミに攻撃を続けます…



「危なくなったら“ガード”よ!

“プネウマ”は本当にヤバくなったら使って回復…」


少年も片手剣“リズビット”を必死に振り回しています……



ゲルミ族は“水属性”です“土属性”が弱点なので
“土属性”のスキルで攻撃するとダメージが大きくなります……


たまたま付けていた“ソイルスラッシュ”のおかげでお供のゲルミを倒すことができました…

しかしゲルミパパは強敵です……
ダメージは与えているのですが高い体力はなかなか減りません……


スキル“ガード”で受けるダメージは半分とはいえ
なかなか痛いです……



「だいぶ減らしたはず
なのに こっちが死にそうや……」



かわいい顔を歪(ゆが)めて少年は耐えています……



「…そうね ダメージの大きな技が欲しいわね……」


お姉さんもかなりダメージを受け 飛び散ったゲルミの体液が青い公国服を汚しています……



「あの技が出れば……
逆転できるのだげど……」


「……あのわざ?」



少年の青い公国服も長い戦闘で汚れています……



「わたしときみで出す
…協力技

“ブリッツシュペーア”

……ふたりのタイミングが合わないと出せないわ…」


「それが 出来れば 勝てるんやな?」



少年は何か決意したようです……



「えぇ……
わたしが“ライトニング”を放ったら
きみは“ヴァーティカルエッジ”を放つの………

タイミングが合えば
協力技“ブリッツシュペーア”が発動するわ……」



お姉さんは“ガード”で耐えながら 少年に説明します……



「なんだか わからないけど
わかった!!

バチバチって来たら
シュピーンとなって
技をバッて出せば ええんやな!」



「(・・?) …ま まぁ…
そんな感じね (;^_^A
……」



お互い わかったような…
わからないような…
そんな感じで納得しあいます……


そのとき “ガード”が解け 別のスキルの発動が可能になりました…


「来たわ!

……いくわよ!!

スキル発動 “ライトニング”!!」



お姉さんの左手に風が集まり渦が巻きます…
小さな放電が始まり
それが結界の中で大きな雷に成長すると 左手を前につきだし魔物に放ちます…


「来た来た 来たで……

シュピーン!や」



音と共に少年のスキル“ヴァーティカルエッジ”が“ブリッツシュペーア”に変化します…



「今や!!

スキル発動!!

“ブリッツシュペーア”!!」



魔物ゲルミパパに“ライトニング”が命中します


高く掲げた少年の片手剣“リズビット”にお姉さんが続けて放った雷がまとい付きます……
そして少年は“リズビット”を大上段から 一気に降りおろします



「ゆうへっど ボロンしてみいや!」



技は見事に命中
魔物ゲルミパパの首がゆっくりと落ち
その身体は黒い霧となって消えていきます……



「……終わったわね」



「あわわ 本当に首が落ちよった……
成仏して〜やぁ……」



「…! あれはゲルミパパが たまに落とすアイテム“ゲルミヘッド”よ
頭に装備する防具…
似てるけど生首じゃないわ…」


「へっ!?
……防具?
念仏唱えんでも ええんか…」

「ほな さっそく……」


さっきまでの怯(おび)えはどこえやら
少年は いそいそと“ゲルミヘッド”を被(かぶ)ります……


「着るみん!
………どうですか?
ワイのすがた………」



そこには 公国の青い服を
ゲルミの体液で汚した
ゲルミがいました…
右手にはゲルまみれの片手剣を提(さ)げて………
なんとも凄惨なすがたです……



「あっ……う うん…
似合ってる…んじゃない…かな……」



ちょっと お姉さん引きぎみです……



「ほんまでっか?
ワイ 嬉しいわ〜」



お姉さんの方へ一歩近づくと お姉さんは一歩さがります……



「…?
どうしたの?
ワイ 避けられてんじゃ…」


「そ …そんなこと …ないわ……

まずは…剣を下に…置きましょ……

話しは それからよ……」



お姉さんは怖がっているみたいです…



「まぁ お姉さんが そう言うんなら…」



剣を足元に置くと
自分のすがたが剣に写りこみました……


……!!


「なんか これ 気に入っちゃた…
しばらく 被ってても いい?」



「(;゜∇゜) えっ?

ええ…いいわよ……」



「やった〜♪
お姉さんだーい好き♪」



少年はゲルミヘッドを被ったまま お姉さんに抱きつきます



「まっ …いいか」



あきれたようにお姉さんはつぶやきます…



こうして少年は お気に入りを被って冒険を続けます
ちょっと呆れぎみの お姉さんとともに……



では みなさん よい夢を…………



………………かぶりもの…
ーおわりー