………


廃墟の改築は 続く……



「……やっぱりマーロ共和国は 暑いね……」


「……そうだな」


パートナーの ひとことに
ワタシは 相づちを返す…

寝室の石のブロックを敷いた床(ゆか)の上に木の本棚を設置し 木のタンスを置き終わった時だった……


さて 次は何を置こうか
考えていると……



「……きみは へいきなの?」


「…あ…あぁ……
特に問題ないが……」



「水浴びがしたい!!

もう 汗だくで 気持ち悪い!!」



……!!


パートナーの叫びで

ワタシは我にかえった…


そうだった…!

ワタシのパートナーは
最北の地…

シュリンガー公国の出身(で)だった……

寒さに耐性があるが
暑さにはよわい……

寒さに弱く暑さは平気な
ワタシとは真逆(まぎゃく)だったのだ………


ひとは自分を基準に
しがちだ……

いまのワタシは まさに
それだった……



「水浴び場……か……
考えてなかったな……」



「きみは いつも考えているようで
どこか ぬけてるよね……」



「………すまない…」


パートナーは肩をすくめた

白い竜が印刷されたTシャツは
汗で素肌に張り付いている………



「…ぅーん?

メイドさん……
何か妙案は ないかな?」



ワタシの隣に立つ彼女に聞いてみた……

……ピンクを基調とした公国メイド隊のメイド服を暑がりもせず着こみ
閉じてるのか開いてるのかわからない細い目を
縁なし楕円メガネで覆(おお)った……

ワタシの自宅管理人だ……


「……そう……ですね……」

右手を軽くにぎり…左頬にあて 右ひじを左手で抱く……

何かを考える
いつものポーズをとりつつ……


「まずは水源ですね…」



「…水源!?………」


「……そうか
水源か………」



「はい この建物も かつては人が暮らしていたはずです
この敷地内に水源となる
湧き水か井戸があったと思います……

しかし……」



「そんなの どこにあるか
わからないよ〜」



「そうですね…崩(くず)れたブロックの下にあるかもしれません……」



「……他に方法は ないのか?」



「………あとは……
別の場所から水を導(ひ)いてくる……ことでしょうか……」



「水をひいてくる?」



「はい…水の湧き出している所から水路を作って この敷地内に導(みちび)くのです……」



「………湧き水……か……」


どこかで見たような……
気がします…」



「ここに来る途中に……
あったよ…」



「そういえば……
山肌から湧き出していたような………」



「よし!
その土地を買い取ろう……」



「えっ!?

ほんき?」



パートナーが驚く……



「買い取るには ハウジングメダルが必要です……」



「錬金石……つかうの?」



依頼の報酬や防具の下取りで手にはいる 青い石……
なかなか貯まらないモノ……
ハウジングメダルはその錬金石1000と交換で550手にはいる……
その土地はメダル500が必要だった………



「……あぁ…本気だ
さいわい建材も大量に手にいれた……

問題ない……」


「水浴び場(プール)……
どうせ造るなら

大きなモノにしよう……

数人が入れるくらいの……」


「……庭先に転がっている
石造りのブロックを…利用して………」

「……少し高くしたほうが……いいか?………」


「……四隅に木を…植えてみよう……」


「………それから………」


……………


……水浴び場(プール)について ワタシはあれこれ考える………


………

……………


こうして ワタシ達は その湧き水の土地を買い取った……
そこに石造りのブロックで水路を作り 石橋を架け
自宅の敷地内に豊富な水を引き込んだ……

これにより いつでも水浴びが出来る……


暑さに弱いパートナーに
とっては必要な場所になった……



さて 次は 何を改築(ハウジング)しようか?………

ワタシは自宅いじりが楽しくなっていた………