…………


ワタシ達の部屋が まだ手を入れるところはあるが 一応の完成をみた…

……ある日

ワタシ達はメイドを交え
3人で 午後のお茶(アフタヌーン・ティー)をしていた

場所は 水浴び場(プール) 給水路近く リンゴの若木(わかぎ)と ヤシの木に囲まれ 木の衝立(パーテーション)を目隠しに
チェックの絨毯(じゅうたん)を敷いた……

庭のスミである……

南国の強い陽射しを
木の葉がやわらげ
時おり吹く風が
絨毯(じゅうたん)に座る
ワタシ達の髪を なびかせ
濡れた素肌に心地よさを運んでくる……


ワタシ達は水浴びをした後
ここで お茶を楽しむのだ……



ワタシは とらじまのオニさらしと
オニパンツ……


パートナーは 青いサマートップと
メープル色のサマーパンツ……


メイドは 公国メイド服……


3人3様(さんよう)で 昼下がりを くつろいでいた……



「……ここで すごすのは
わるくないけど……

住むのは なんか……

…ちがう………」



3人で話すなか
パートナーが そう発(はっ)した……



「………?

…なにか……足りないのか……?」

「寝室も…ある

調理場も設置した……

水浴び場も完成している…

……他(ほか)に

………なにが……

…足りない?」



ワタシには パートナーの考えが わからない……



「……ふつうの家にすみたい……」



「…?………

ふ…つう……の……

家?」


……


「ここは なんか…おちつかない……」



……………



「きっと パートナー様は

屋根の ある お宅に住みたい……
……ということでは?
ないでしょうか……」


お茶の お代わりを
ワタシ達のカップに注ぎながら 自宅を管理してくれているメイドが答えた……


「そう!
わたしが住みたいのは
そういう ふつうの家だよ……」


「………屋根のある家か……

……………

…メイドさん……
近くに そういう物件は
ないかな?……」



ワタシが入手した廃墟には屋根がなかった……

そのまま改築したため
屋根の存在を忘れていたのだ………

何しろ ここは雨が降らない……
だから 青天井のまま
放置していても問題なかったのだ………




「……そう……

…ですね………

…この お屋敷の西出入り口
から 山を登ったところ
に空き地が あったと………

記憶しております……」


メイドさんは いつもの
考える仕草(ポーズ)をとり
答える……




「そんなところに!?」



「…初耳だな……」



ワタシ達は飲みかけていた紅茶も そのままに……
メイドさんに聞き返す……



「はい……
……少々(しょうしょう)
事情がありまして……」



いつもの にこやかな笑顔で答える……
相変わらず 表情の奥(何を思っているのか)が
分から(よめ)ない



「…じじょう?」



パートナーも知らないらしい……



「……その事情とは?」



「申し訳ありません……

ご主人様の ご決断が必要ですので……

これ以上は………」



メイドさんは深々と
頭を下げる……


一分(いちぶ)の隙もない
メイドお辞儀である……





……戦闘メイドに手を出しては いけない……

如何(いか)なる状況でも
即 反撃(カウンター)を
当ててくる……
たとえ 徒手空拳 寸鉄すら身に帯びていなくても……
……だ…


シュリンガー
公国メイド隊とは……


見た目と裏腹に情報収集から戦闘まで こなす
間者(スパイ)集団なのである………



……………



たんなる噂だが……





「………どうする?」

パートナーが かわいい眉をひそめ聞いてくる……


………


「……メダル……何枚必要だ……」



ハウジングに関しては
ハウジングメダルで取り引きされる……
土地の購入から家具のレシピに至るまで……
ハウジングメダルは 青石 (錬金石)と交換になっていた……



「……“頂上へ至る道”に1500枚……“山頂の空き地”に1700枚……合計で3200枚になります……」



「えぇ〜?!

そんなにぃ〜!!」


………



「ざっと…青石(錬金石)……6000ってとこか……」



「ち…ちょっと……
ほんき?」



パートナーが慌てる…

青石(錬金石)は手に入り難(にく)い……
しかも かなりの量である
だが 持ち合わせがあった……


「……よし
買おう………」


ワタシは 物に執着しない性格(たち)なので……

躊躇(ちゅうちょ)なく交換した……



「……きみは 即決(そっけつ)すぎるよ……」



パートナーのあきらめたような声が聞こえた……


ワタシ達は水着から
それぞれ 赤と青の共和国服の上下に着替え………


敷地西口に集まった…

無論ワタシが赤……
パートナーが青である……

…………



「……さっそくだが
案内してくれ……」



「では こちらへ……

お足下(あしもと)に
お気をつけ下さい……」



メイドに案内され
西出入り口を 進む……

メダルを払うまで
通り抜けられなかった
出入り口を抜けると

空は雲に閉ざされ……
かといって暗くなく

………そして


寒さは感じなかった……



「太陽は見えないのに
明るいね……」



「……そうだな…」



山道は勾配(かたむき)が
急にならないよう
少し登っては平らな道になり少し登っては……を繰り返し……楽に登ることが出来た

木の手すりが設置され
谷底(した)に 落ちることはない……


凸凹した山肌が眼下に見え
細い川が1本流れている
上流の方には小さな滝が見え 狭いながらも滝つぼ まである………



「……なかなか良い景色だな……

……購入して良かったよ……」



「ここは 風が気持ちいいね……」



ワタシ達は それぞれ感想をのべた……


登りきった所に
小さな広場があり
そこを左に進むと
目指す目的地らしい……



「……ご主人様……
ここで休憩なされますか?……

それとも このまま進みますか………?」


いつもの にこやかな笑顔で メイドが訊(たず)ねてきた…………



「……頂上に 着かないと
話してもらえないのだろ?
………事情とやらは……」


「……申し訳ありません

きまりごと(規則)ですので……」


メイドは 少し困ったように その細い眉をひそめる……



「………わかった

先を急ごう…」



「ここまで 来たんだもの

はやく知りたい!」



「では…

こちらへ……」



メイドを先頭に ワタシ達は 先を急いだ……




…………




…………………ー後編ー
へ続く………