前回の物語より……

寝ぼけてボンド退会をしてしまった彼は 再び己(おのれ)のボンドに戻る為 サブリーダーを探すことにしたのです………




なんのあても無いのですが
シュリンガー公国酒場を
出て大通りに出てみました…
相変わらず溶けない雪が街を覆い はく息も白く虚空へ消えてゆきます……

曇天が太陽を隠し 着込んでいても寒さが身体に忍び込んできます……
とても楽しい気持ちには成れそうになりません……
不安な気持ちがみるみる膨らんできます………
(二度とあのボンドに戻れないのでは?……)
絶望感がさざ波のように広がってきました……


通りは冒険者で溢れ 街の住人より多いのでは?と錯覚します………

もしかしたら ボンドメンバーに会えるのではないか?という
一抹(いちまつ)の希望すら消えそうになっていきます………


道行く冒険者をぼんやり眺めながら

「…私はマスターとして、相応(ふさわ)しかったのでしょうか?」

ため息と共に呟(つぶや)いてしまいました……


「あなたには、ボンドマスターとしての資質があるわ…あのボンドにあなたを、
したうメンバーがちゃんといるわ……
自分を信じて……。」


パートナーの励ましに
彼の暗い気持ちが晴れてゆきます……
うつむく瞳を通りに向けると……


「おや?あのひと(女性)は……。」


見知った顔を見付けました

…紫色の髪に切れ長の金色の瞳が印象的な彼女は
彼のボンドに所属していたのです……



「すみませ〜ん!」



彼は 彼女の方へ声をかけます……



「ぅん( -_・)?
あの帽子からはみ出たアホ毛は……」


彼女も 彼に気付き彼の方へ歩み寄ります……


「ボス!! こんな所で どうした?……」


彼女はボンマスである彼をそう呼ぶのです………



「あぁ〜、良かったです……
気付いてくれまして………。」



「今日もソロか?
ボンドに顔を出さないとは珍しいな…」



「えぇ……実はその件なのですが……。」


彼は彼女に 事の顛末(てんまつ)を語りました……



「……と言うわけで、
ウチのサブリーダーに連絡を取って欲しいのです…。」


「……なるほど うっかり者だな ボスは……
わたしが通りかかって良かったな……」



「助かりました……、
貴女(あなた)は、どうして此所(ここ)へ?」



「忘れたのか?今日の日替わりクエストボンドに寄付しよう≠フ為だ……」



「ボンド拡張に協力してくれるのですか?」



「わたし達は 同じ仲間(ボンメン)じゃないか 当然だ
( ̄^ ̄) 」




「おっ!サブリーダーと繋がったぞ 今“枯れはてし炭坑”(枯れ炭)にいるらしい……
古代の化石探しの途中 見付けた池で釣りをしてるそうだ……」



「何か私のこと、言ってますか?」



「: “またか?……マスター……”
と言ってる……」



「はは、…面目ない……」



彼は以前 マスター権限を誤って消失した事があったのです……その時 サブリーダーに再びリーダーに任命してもらっていたのでした……



「…場所とch(チャンネル)を聞いてるな……
公国5000ch 今のこの場所でいいか?
ボス!」



「えぇ、ここ…酒場前でいいですよ。」


「了解だ そう伝える……」


「マスター殿 こんばんは
話を聞いて来ました!」



……?


リンゴカゴを上下に被り素足だけ出した……
それは……
米俵に見えました……
頭上?に王冠が浮いているから悪魔かも知れません……米俵のようなモノは
米俵と名乗りました……
よく見ると やっぱり
米俵でした………



「…えっと、米俵さん?
何か私に、ご用でしょうか……。」


しばらく 呆気(あっけ)に
とられていた彼は ようやく正気に戻り訊(たず)ねます………



「ワイや!ワイ!!
プリちぃなポニテメガネ少年や!!」



「…あぁ、貴方(あなた)でしたか、少し驚きました……。」



「よし!燃やそう…」



「まっ まってや 姉(あね)さん!
会って すぐ米俵 燃やすんわ やめたってや……」


「いいや 汚物は消毒だ…」

「あ あかん 中身 焼き米になってまう〜……」



「楽しそうな事を やってると聞いて来ました」

白いフユネコの上下を着(き) 淡い水色をした髪の幼女も出現(あらわ)れた…
彼女も同じボンドメンバーです……



「そこの(幼女)ひと……
助けてぇ〜な……」



「…米俵……燃やそう………(-_-#)」



「ちょっ あんさんまで…
やめてぇ〜な……」



「次はスイカ割りだな…」


「……米俵割り………(’-’*)♪」


「やめてぇな…中の米
漏れてまう〜………」


シュリンガー公国酒場前の一角は混沌(サバト)めいていました……



「……なんだ? これは……」


濃緑色の魔女めいた格好をした少女が その惨状を見て呻(うめ)きます……



「…場所を 間違えたか……」

思わず踵(きびす)を返(かえ)そうとしました……


「おぅ サブリーダー
早かったな…」


「……おはよう…ございます……」


「ワイも おるでぇ……」


「ご足労かけてすみません。」



「…これは ワタシを呼び出す為だけの 手の込んだイタズラではないのだな……」



その光景は あまりに このボンドの日常(いつもの活動風景)だったのです………
とても一大事には見えないのは しかたありません………

それゆえ 彼女は“担(かつ) がれた”と一瞬思ってしまったのです……




「貴女(あなた)が来てくれて助かりました。」


「ワタシは このボンドの副官……当然だ…」



「さっそく、お願いします。」


「わかった……」



ひざまずく彼の額に手を触れ

「汝を このボンドに入会することを認める……

我が権限にて リーダーに任命する…………」

彼女は宣言します



「これで そなたは このボンドのマスターだ……」



「お手数おかけします。」



「…マスターを補佐し支えるのが副官としての務め
……気にする事はない……」



「貴女(あなた)をサブリーダーにして、良かったと思います………。

実は今回の件でボンマスとして私は相応(ふさわ)しくないのではと………


…………。


そうです貴女(あなた)
……ボンマスになりませんか?」




「それは前にも 断ったはず……
ワタシはリーダーの器ではない……
そなたの様に 人を惹き付ける魅力はワタシには無い……」

「現(げん)に そなたの危機に こんなにもメンバーが集まっている……
ワタシでは こうはいかないだろう……
そなたにはマスターの資質がある………」



「そう……ですか……。

わかりました。
引き続き私がマスターを続けましょう。

こんな私ですが、これからも助けてくれますか?」



「もちろんだ……
そなたとは あの日以来の親友(とも)だ……
これからも変わらない…」


「ありがとうございます。」



「一件落着だな ボス!」


「えぇ 話やぁ…」


「(^o^●)コクコク…」


「……これからも ワタシ達と共にだ……」



「ありがとうございます、皆さん。
頼りないボンマスですが、 皆さん!これからもよろしくお願いします……。」





こうして マスターの資格消失事件は終了しました

これからも問題は起こるだろうが このメンバーなら解決していけるでしょう………




………………………おわり