シュリンガー公国……
そこは冒険者 北の都……
新人からベテランまで雑多な人が溢れる街……
そこは出合いと別れの場所………





シュリンガー公国酒場 そこはクエスト(依頼)の窓口も兼ねているため
多くの冒険者で溢(あふ)れている……

二階が一泊宿になっている為 ここを利用する冒険者は多い………

その安宿の一室……



「もぉう 昼だよ〜〜
起・き・て くれませんか〜〜
もし も〜〜し」


のんきな声が部屋の中から聞こえる……


糸目の幼女がベッドの上の幼女を起こそうとしていた
しかし“フユネコ”の上下を着 うつ伏せで枕に顔を埋(うず)めたまま 彼女は起きそうにない………

いくら揺さぶっても
うめき声をあげるだけ
それ以上の動きは無い……


彼女達も冒険者である

公国の夜は寒い……
昼でも街中の雪は溶けない
ましてや夜となると部屋の中でも冷気が忍び寄ってくる………
寒さから逃れる ひとつの手段……

呑み食いすることである…

彼女は 昨夜(さくや)も しこたま呑んでいた……

ポン酒の熱燗……
熱々のポトフ………
たちまち溢(あふ)れ転がる
徳利(トックリ)………
泥酔するのも やむ無し
である………


ここは一泊宿なので昼には退出しなければ ならない


「もぅ〜〜仕方 ないです〜」


そう言うや いなや
パートナーたる
糸目の幼女は自分と同じくらいの背格好をしたベッドの上の幼女を
ひょいと担(かつ)ぐと
部屋を後(あと)に廊下に出た……

洗面所に向かうと
手慣れた手つきで“フユネコ”装備の幼女の身仕度(みじたく)を整える……

ボサボサの水色の髪をすき…
洗顔を済ませ…
軽く化粧(メイク)を施す……


「はい
できあがり〜〜」

先ほどまでの死にそうな顔がウソみたいである……


「いきますよ〜〜」


「(=_=) コク……」



1階に続く階段を降りると

「よぉー! 嬢ちゃん達
よく眠れたかい?」

この酒場兼宿の男主人が声をかけてきた……


「あっ〜おはよう・ございます〜〜」

「(=_=) コク……」


彼女らは厨房兼受付に向かい番号の書かれた部屋札を主人に渡す……
料金は前払いで 部屋札を受け取り 宿を出る時 札を返すのだ……

主人は札を受け取ると
宿帳にその旨(むね)を書き留め……


「そういえば嬢ちゃん達もソロが長いな……
どうだい?そろそろボンドに入ってみては?
仲間は いいもんだぞ…
狩は楽になるし 仲間間で アイテムの融通がしやすい
それに何より退屈しない……」

「どうだ いいことずくめだろ?……」



「でも〜〜入ってみて 気が合わなかったら〜〜?」

「(ーー;) 」


「そんときゃ 辞めちまって別のボンドに入りゃいい…むずかしく考えることは無いのさ」



「なるほど〜〜考えて・みます〜〜」

「( ̄〜 ̄;)」



「おぅ!また来てくれよ!!」

彼女らは酒場を後にした………




シュリンガー公国酒場前
大通り……
冒険者が行き交い そこかしこにたむろし パフォーマンスを見せあう……
そんなところ………

もちろんボンド勧誘も盛(さか)んだ……



あるボンドマスターたる
彼もパートナーを伴(ともな)ってこの地を訪れていた………
軍帽から覗く淡い空色の髪が目を引く………

「……私達のボンドに、職業レベルの高い人が欲しいですね。」



「わたしたちのボンドも人数が増えたわ…
でもジョブレベルの高い人は少ない……
だからかしら?」


淡いピンクの長い髪を首の後ろでまとめ
パステルグリーンの占星術士の装備一式を身に纏(まと)った彼のパートナーが聞き返す……



「……そうです、高レベルの仲間がいれば戦闘が楽になりますし、経験も豊富でしょうから、色々教えてもらえると思うんですよ……。」


「そうね……でも、いるかしら?高レベルでソロの人なんて……
すでにボンドに所属してるんじゃないかしら?」



「私も、そう思います……
でも、この世に絶対は無い と思うんですよ……。」



「そうね……まぁダメもとで探してみましょう…」



彼らは酒場前で新たなメンバーを探し始めた……


しかし なかなか見つからない……

……今日はダメかな
と思い始めたとき

酒場から出てくる人影を見た……


「立派な杖を背負っているわ……
司祭様なら新たなメンバーが見つかるよう
祝福してもらいましょうよ。」

杖を背負っている者は修道士か占星術士 もしくは二次職の司祭である……
まれにそれ以外の職が背負っている事もあるが……


「もし司祭でソロだったら
私達のボンドに入ってもらいましょう…。」





「すみませ〜ん!
…司祭様ですか?」


「(・・) コクリ ……」


「わたしたちに〜〜
何か ごよう〜ですか〜?」


「私達を祝福して、くれませんか?」


「最近、うまくいかなくて……。」




「……あなた方に……神の恵みと祝福を………」


“フユネコ”装備に身を固めた幼女は おごそかに祝詞を唱え 手にした杖を高く掲(かか)げた……



「…では……わたしたちは……これで」



「あの、少しよろしいでしょうか?」



「(・・? ……何か?」



「みたところ、ボンドには
入っておられないご様子
……私達のボンドに入りませんか!」



「(@ ̄□ ̄@;)!!」


「えっ〜〜〜
……どう〜しようか〜〜」

「(-_-)゛う〜ん……」



「あっ!無理に入って頂くわけには、いかないので。」


「そう〜いえば〜〜酒場の〜 主人も〜〜ボンドを〜 すすめて〜いたような〜?」


「(*゜Q゜*) ↑ …そう…
だった……わたし……は
…誘われるのを…待って…いた?……」



「はいり〜ましょうよ〜〜




「( ̄〜 ̄;)
………
……………わかりました…
……入会……しましょう……」




「ありがとうございます!」

「ようこそ わたしたちのボンドへ……」


「_(._.)_ よろしく……」


「これから〜〜よろしく〜〜お願い します〜〜」




こうして新たなメンバーが加わった……
このボンドは また にぎやかになることだろう………