少年とお姉さんが冒険を始めてを始めて50日ぐらいが過ぎました……

そんなある日……




ここは雑多な物が並ぶ シュリンガー公国 市場です…

市場とは冒険者自信が不必要な物を下取りに出し Zellや錬金石に変えたり
採取したアイテムを出品して Zellを得たりする場所です……


下取りは値段が決まっていますが 出品アイテムは冒険者自身が値段を決められるため アイテムの値段が上がったり下がったりします……


珍しいアイテムを手に入れようとする者……

一攫千金(いっかくせんきん)を狙う者……


人が集まり活気に満ちています……


そんな場所に 少年とお姉さんは訪れています…
少年は お気に入りのゲルミヘッドを被っていますが人々は特に 気にも止めません……
変な格好をした冒険者など見慣れた風景…
いつもの日常なのです……ゲルミヘッド程度では誰も見向きもしません……



「…この格好 なんか言われる 思(おも)うたんですけど……スルーされとります……」



「…そうね 言っては…なんだけど……普通ね……」



「ワイ 緊張して損したわ…」



「そうだわ…市場に 何かあるかも…覗いてみましょう」



市場に着くと
さっそく お姉さんは 並べられた品を覗きこみます……



「あっ ワイも……」



少年もいっしょにその品々をながめます………


その一角(コーナー)は
様々な角(つの)が
並(なら)べられていました……



「あっ……あれは!」



りっばな角に目が吸い寄せられます……



「まぁ!見事なトナカイの角(クロースホーン)…」



お姉さんも感嘆の声を上げます……


それは昨年のイベントでのみ手に入れる事ができた
限定品だったのです……

ふたりがこれまで溜め込んだ Zellでは とても買えない品でした……



「………難しいわね」



「そう……ですね…」



ふたり顔をつき合わせて
ため息をつきます…


………


ふたりは悲しげに市場を後(あと)にします……



「なんか Zellを稼ぐ方法はないでしょうか…」



「難しいわね……地道に魔物討伐をするしか……」



話しながら二本サクラ前まで歩いて来ました
公国の象徴でもあり雪が積もるほどに寒いのに満開の花を咲かせ続ける不思議なサクラです……

その近くに掲示板がひっそりと立っていました…

何気(なにげ)なしに ふたりは ひょいと覗きこみます…



“:ジャガイモ 求む!”


“:クロケット出品中!”


そんな書き込みが見えます……



…!!

「これや!!」

「お姉さん! イモ掘りです
……さっそく 行きましょう!」



駆け出す少年に手を引かれお姉さんは困惑顔……



「(*_*) ……ち ちょっと……
説明して!?」



走りながら少年は説明しました……



「イモを掘って 一儲(ひともう)けするんです」



「…? ジャガイモを?」



「そうです!
クロケットに合成すれば
もっと 売れるはず…」

「毎日 イモ掘りです…」



「…市場に 出品して
Zellを増やすのね…」



「そうです…“雪山と草原”…“滅びの村”…“国境”北側… この3ヵ所を回って掘るんや…
どうですか? ワイの考え……」



「上手く回れれば…1日 21個…は採取できるかも…」



「あとは相場価格しだいね…」



「新しいイベントが始まれば 欲しがる冒険者(ひと)
は絶対いるはず……

そこを狙って 大もうけや……」




こうしてふたりは毎日ジャガイモ掘りを始めました…



少年の考えは的(まと)を得ていました……
ジャガイモやクロケット
は出品すれば たちまち売れてゆきます……



あれから10日が過ぎようとしていました……



ついに目標額を越えました
ふたりは目的の品を手に入れる事ができたのです……


「やったわね…」

大きな包みを抱(かか)えてお姉さんは少年に話しかけます……



「おおきに…感無量です」



少年も答えます……



「わたしは宿の予約を入れてくるから 先に酒場に戻ってるわ…

きみは どうする?」



「ワイは少しブラついてから戻ります…」



「…そう
早く帰って来てね…」



お姉さんは宿兼酒場に戻って行き 少年は市場に残ります……

日も傾き 暗くなって来ました……


(…ワイ このままでいいんかい……

お姉さんは ワイの角(つの)を 買うために ごっつう協力してくれたんや

ワイ お姉さんに何も返しとらん……

どうしたら ええんや……)


少年は市場の前で 考え込んでいます……



「…お兄さん……
そこの…ゲルミヘッドの
お兄さん!」


「へっ?
…ワイ?」



「そうです あなたですよ…」


市場の お姉さん店主に
呼びかけられ
少年はビックリ………



「いつも ご利用 ありがとうございます…」



「あっ…どうも……」



あわてて お辞儀をします……



「何か 探し物ですか?」



辺りは暗くなり 店先に吊るされた 暗くなると光る鉱石を使った明かり(ランプ)が灯(とも)ります……


「実は…お姉………いえ
ワイのパートナーに贈り物をしたいんですが…
何を選べばいいのか わからなくて……」



「……あぁ 黒ぶちメガネを掛けた緑髪の……」

「さっき お買い物をされた……」



「そうです ワイのパートナーです!」



「よく お見えになります

おひとりで品物を見てますよ…」



…!!



「何を見てました?」



「そうですね…“クロースホーン”と いっしょに……
“オニの1本ツノ”を
見てました……」



「それや!」



「えっ?」


突然の少年の叫びに
市場のお姉さん 驚いたみたいです…


「そのツノ…
売ってください…
頼んます……」


しかし この品も2月のイベント限定品……
クロースホーンより安いとはいえ 高額商品です……
手持ちのZellでは足りません……

普段採取しているアイテムを貸し倉庫からひっばり出し片っ端から下取りに出していきます……



「…まだ

たらん……」



もう売る物がありません…

「お願いや お姉さん
その“ツノ”ワイにゆずっとくれ……

このとおりや……

……頼(たの)んます……」


雪の積もる冷たい地面に額を擦(こす)りつけ
少年は土下座します……


日は沈み 周囲(まわり)は暗い闇のなか 気温も下がり 店先の明かり(ランプ)がぼんやりと辺りを照らしています………



「そんな お客さん こまります…」



市場の前に土下座されて
店主のお姉さんは困ってしまいました

これでは 店を閉める事が出来ません……



「あんさんが首を縦に振るまで ワイはテコでも動かへんで……」


少年は土下座したまま居座るつもりです……




「おぉ〜我が弟子よ…
これは どうしたことだ…」

「あんまり遅いので きみのパートナーに頼まれ 様子を見に来たのだが……」


「どうでも いいけど
何で?ボクまで………」



「その声は…

冒険師匠!

バトル師匠!

……イベント師匠!!」



声をかけられ 思わず頭を上げる少年の目に いつも酒場にたむろして助言をくれる3人の姿が飛び込んできました………



「じつは …かくかく しかじか…………」



……少年はパートナーに贈り物をしようとしますが
肝心の品があと一歩で手に入らない事を3人に説明します………



「……なるほど 話はわかった……

その足りないZellは我々で払おう…」



「ほんまでっか!?」



「弟子の窮地(きゅうち)を助けるのは 師匠のつとめ
何も問題ない……」



「おおきに……
恩にきます……」



「まっ これも師匠として
しかたないよね……」



「おかげで 助かりました〜」




「これで よいかな 女店主……」



「はい!ありがとうございます……

…これはサービスです……」


師匠達が足りないZellを支払ってくれました…
そのうえ店主のお姉さんは“オニの1本ツノ”をキレイな包装紙に包みリボンまでかけてくれました……


「良かったな 弟子くん…」


「酒場に戻って お祝いだな…」



「へぇ ……皆さん ほんまにおおきに……ワイの忘れられへん思い出や………」



話ながら4人は酒場に着きました……



「よぉ!少年…
遅かったな………」


酒場の主人が陽気な声をかけてきます……



「もぅ 心配したんだから…」



お姉さんが少年に抱きついてきます……


「ちょ……お姉さん…
放してぇな……」


少年は暴れますが お姉さんの方が大きいので振りほどくことが出来ません…



「まぁまぁ 二人とも
今日は記念日 パーティーを始めようじゃないか…」

冒険師匠の声に


「記念日って 何です?」


「今日は君たちが冒険を始めて ちょうど60日目なんだ……」

イベント師匠が続きます


「“大体分かる冒険者”から“先輩冒険者”に称号(しょうごう)が変わるのだ……」


バトル師匠が説明します…


「今日は そのための お祝いよ…」



お姉さんがしめます…



「へっ? そうだったんでっか?

ワイ ちぃ〜とも知らんかった……」



皆 少年に内緒にしていたみたいです……



「この“クロースホーン”は その…記念の品として受け取って欲しいの……」



「えっ? そうだったんでっか!?」



「じつは ワイからも
お姉さんに 渡したいものが あるんですわ…」



「まぁ! なにかしら?」



お姉さんは期待を込めた眼差しをしています……



「……これを 受け取ってください!」



少年は市場で手に入れた
包みを差し出します……



「わたしに?

……うれしい♪」


お姉さんはさっそくリボンをほどき 中身を取りだします

「ありがとう!
大事にするわ!!」


さっそくアクセサリー
“オニの1本ツノ”を額に装備します…



「どう?
似合うかしら……」



「似合っとります……

ほな ワイもさっそく……」


少年もアクセサリー“クロースホーン”を装備します


「どないです……」



ゲルミヘッドから立派なトナカイのツノが生えました……



「これは…なかなか……」



「ツノの生えたゲルミ?か……」



「ツノゲルミ……

……ツノミだね

これは……」


3人の師匠達が感想を述べます……



「ぅん ツノミに決定ね!!」


お姉さんが宣言します…



「皆さん……
ほんまに おおきにや…
今日のことは忘れへん!
この“ツノ”大事にするで……」


「わたしも 大事にするわ……」



「あ〜 うん……
お互いに“ツノ”の交換も終わったところで
始めてくれないか?」



酒場の主人がしびれを切らしたようです……



「みんな! ジョッキは
持ったわね……」



「「「「「乾杯!!!!!」」」」」




パーティーの始まりです!!



…………おくりもの……

ーおわりー